物理の研究の備忘録

高エネルギー物理学とかいうマニアックな研究分野の博士課程にいるわたしの備忘録。主にPCの設定とか

ラドンって知ってますか?~身近な放射性物質であるラドンのまとめ~

 

放射能の恐怖

 

3.11以降(といってももうずいぶん経ちますが)ニュースや新聞でも放射線を扱う話題が増えてきました。

原発に賛成とか反対とかいろんなことが言われてますが、どうも放射線に対して正しい知識をもってない人が感情論で意見を主張している例が多いように思えます。

「とにかく放射線は危険だから原発廃止すべき」

みたいな意見ですね。放射線は確かにとても恐ろしいですが、正しい知識に基づいて怖がっている人がはたしてどれくらいいるでしょうか?

 

寺田寅彦さんの言葉に

 

ものを怖がらな過ぎたり、怖がり過ぎたりするのはやさしいが、正当に怖がることはなかなか難しい

 

という言葉があります。どのような意見を持つにしろ、正しい知識を持つことは重要です。

 

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事故後の福島第一原発

 

さて、今回はそんな放射性物質の一つであるラドンについて注目して記事をまとめたいと思います。今回ラドンに注目した理由は2つあります。

 

1.放射能放射線について素人にもわかりやすく解説したページは多いが、ラドンにについては一般にあまり知られていないと感じるため。

2.自分が勉強したことをとりあえずまとめたい。

 

の2つです。2については極めて個人的な理由なのでまぁいいでしょう。

1について、、

 

なぜラドンなのか?

放射能放射性物質というとまず何を思い浮かべますか?

多くの人は「セシウム」や「プルトニウム」、「ウラン」、震災以降は「ヨウ素」なんかを思い浮かべる人が多いでしょう。そもそもラドン放射性物質であることを知らない人も多いかもしれません。放射線というとどうしても原爆や原発などをイメージする人が多いですよね。

しかし、被ばくする原因はそれ以外にもたくさんあります。

以下の図を見てください。

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主な被ばくの原因とその際にどれくらい被ばくするか(単位:ミリシーベルト)をまとめたものです

実は地球に住んでいるすべての人は普通に生活しているだけでも様々な要因で被ばくしています

例えばCTスキャンをとったりすると被ばくしますし、食べ物を食べるだけでも被ばくします。CTスキャンのような人工的な放射線を人工放射線、天然のものを自然放射線といいます。

そして自然放射線の中でも被ばくの大きな要素を占めているのがラドンの吸入による被ばくです。

しかもラドンはガスなので、吸い込んだのち体内で被ばくする内部被ばくです。

内部被ばくは外部被ばくに比べて健康へのリスクが高いです。

 

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ラドンについて知ることは、身近な放射線放射能を知るということです

放射線は目には見えません。手で触れて確かめることもできません。知識が少ないと恐怖の対象でかありません。

だからこそ、多くの人が放射線について正しい理解を持つべきだと思うのです。

 

最後にもう一つ、ラドンを学ぶ有用性を一つだけ、実験の観点から触れておきましょう。

放射性物質には半減期というものがあります。一言でいえば、放射性物質が半分になるまでにかかる時間です。半減期が長いということはずっと放射線と出し続けるということなので、なかなかやっかいです。では、現在地球に存在している放射性物質半減期はどれくらいでしょうか。

例えば地殻中に含まれるウランウラン238)の半減期はだいたい44億年くらいです。多くの人は

「えぇ。。?長っ」と多くの人は思ったでしょう。なんでこんなに長いのでしょうか。

それは放射性物質とはそもそも不安定な物質だからです。放射性物質は小さな視点で見ると、不安定な原子なので、放射線を出して安定な原子になるのです。一度安定な状態になると、もう放射線は出しません。つまり、半減期の短い物質は放っておいてもすぐに崩壊していなくなるのでなんの問題もないのです。逆にウランなんかは地球が誕生したことからありますが、地球が誕生してから今までの50億年間ずっと放射線を出し続け、ようやく半分になってきたところなのです。つまり最も厄介な放射性物質半減期の長い物質なのです。

原発問題で放射性物質のゴミが問題になっていますが、これは半減期が長く、ずっと放射線を出し続けるため問題なのです。

 

一方で、ウラン系列のラドン半減期は3.8日です。

「あれ、矛盾しているぞ。現在地球に残っている放射性物質はどれも半減期が何億年もある長いものなんじゃないのか?」

という疑問がわいた人は鋭い人です。ではなぜ半減期の短いラドンが地球上に存在していられるのか?

 

それはラドンが3-4日で崩壊しても次々と新しいラドンがわいてくるからです。

以下の図はラドンの崩壊系列です。地殻中にもともと存在するウランが崩壊して、トリウムになって、トリウムがまた崩壊して、、と次々と崩壊を繰り返してラドン(Rn)になるのです。

 

 

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大元であるウラン半減期がめちゃくちゃ長いので、ラドンが崩壊してポロニウム(Po)になっても次々と新しいラドンが沸いてくるのです。

つまり、ラドンは身近な放射性物質であるとともに、半減期の測定がほかと比べて用意です。ここから、ラドン放射線物質を使った実験教材としてもすぐれています。

ちなみにもう一つラドンにはトリウム系列という崩壊系列がありますが、トリウムから同様に崩壊を繰り返してラドンまでたどり着きます。

 

ラドンはどこにある?

先ほども言ったように、ラドンは天然に存在するガスです。スーハー深呼吸でもすれば簡単に被ばくします。こうやって聞くとやばい物質のような気がしますが、被ばくする量は微量なので問題ないです。被ばくについては「被ばくするかしないか」よりも「少量の被ばくで済むようにするにはどうするか」が重要なのです。

ラドンの場合は地下に多い傾向があるので、地上より地下のほうが被ばくのリスクは高まります。なので、地下に行くときはできるだけ喚起に気を付けたほうがいいでしょう。基本的に被ばくは体に良くないものですが、「少量の被ばくなら体にいい」という考え方もあるようです。少量の酒は体にいい、というのと同じような考え方でしょうか?ホルミシス効果というようです。これを利用したものに「ラドン温泉」なるものがあったり、「ドールストーン」という理容、健康目的で部屋に置くタイプなどいろいろあるみたいです。少量の被ばくは体への影響がわかりづらいため、いろいろは考え方があります。本当に体にいいのかもしれません。しかし、個人的には「被ばくは少量に抑えるに越したことはない」と思っています。あまりその手の情報に踊らされないようにしましょう。(ドールストーンは放射線の測定する実験用の放射線源としては重宝してますが。。)

 

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ドールストーン。公式サイトより。

 

まとめ

・我々は普通に生活しているだけでもある程度被ばくしている

・自然放射線の主な原因の一つにラドンの吸入による内部被ばくがある

ラドン半減期が短く測定が容易

ラドンを商用利用したものもあるが、あまりおすすめはしない

 

以上です。今回は放射線の発生原理などの物理的な現象や被ばくの計算式などについてはあまり触れませんでしたが、その辺についてはわかりやすく解説したサイトや本が多数あるのでよかったら勉強してみてくださいね。

 

わかりやすさを優先して多少正しくない表現も含まれているかもしれませんが、意見や質問などなんでも受け付けています。

 

おわり。